甲状腺疾患
甲状腺疾患

甲状腺は、首の前部にある小さな臓器で、全身の新陳代謝を調整するホルモン(甲状腺ホルモン)を分泌し、代謝や体温、心拍数など身体のさまざまな働きを調節しています。
甲状腺疾患には、ホルモンが過剰になる甲状腺機能亢進症、不足する甲状腺機能低下症、甲状腺の腫れや結節などがあります。動悸、手の震え、体重減少、疲れやすさ、寒がり、体重増加、首の腫れなどの症状が見られる場合は、甲状腺疾患の疑いがあります。気になる症状がある方は、自己判断をせず一度ご相談ください。
甲状腺疾患は、ホルモンが過剰な場合と不足している場合とで症状の傾向が異なります。複数の症状に心当たりのある方や、のどの腫れ・しこりに気づいた方は、お早めにご相談ください。
バセドウ病は、自己免疫の異常により甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。発症には遺伝的な体質に加え、ストレスなどの環境因子が関係すると考えられています。20~30歳代の若い女性に多く、動悸、体重減少、手の震え、発汗、疲れやすさなどの症状がみられます。甲状腺の腫れや目の症状(眼球突出など)を伴うこともあります。
橋本病(慢性甲状腺炎)は、自己免疫の異常によって甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気です。原発性甲状腺機能低下症の原因疾患として最も多いものです。女性、特に30~40歳代に多くみられます。びまん性甲状腺腫大が見られることも多くあります。
慢性甲状腺炎のうち、甲状腺機能低下症となるのは約1割です。甲状腺機能が低下すると、疲れやすい、寒がり、体重増加、むくみ、便秘、無気力などの症状が現れることがあります。一方で、甲状腺機能が正常なまま経過する場合もあります。
亜急性甲状腺炎は、ウイルス感染などとの関連が考えられる甲状腺の炎症性疾患です。
上気道感染症状に続いて、甲状腺の痛みや腫れ、発熱、だるさなどがみられます。痛みがあごや耳、首の後部へ移動することもあります。炎症により一時的に甲状腺ホルモンが過剰となり、動悸、発汗、手の震えなどを伴うことがあります。
多くは自然に改善しますが、回復期に一時的な甲状腺機能低下症を生じることがあり、まれに機能低下が慢性化する場合もあります。
甲状腺腫瘤は、甲状腺にできるしこりや結節の総称です。良性のものが多い一方、甲状腺がんが疑われることもあります。多くは自覚症状がありませんが、腫瘤が大きくなると首の腫れや圧迫感、飲み込みにくさなどがみられることがあります。
診断には甲状腺エコー(超音波検査)が有効です。必要に応じて血液検査や専門病院での穿刺吸引細胞診などを行い、良性か悪性かを評価します。
甲状腺疾患の診断には、血液検査による甲状腺ホルモン値の測定や、超音波検査による甲状腺の形状、しこりの評価を行います。
バセドウ病は、薬物(抗甲状腺薬)治療、放射性ヨウ素内用療法、手術の3つの治療法があります。薬物療法は、最も簡便で多くの場合に第一選択となります。血中甲状腺ホルモンを測定しながら、薬の量を調整していきます。薬物療法を2年以上継続しても薬を中止できない場合は、専門病院に紹介し、他の治療法を検討します。
甲状腺機能が正常の橋本病では、原則的に治療は必要ありません。甲状腺機能低下症がある場合は、合成T4製剤の内服を行います。潜在性甲状腺機能低下症の場合、妊娠中あるいは妊娠希望の女性では速やかに甲状腺ホルモン補充を開始します。甲状腺刺激ホルモン(TSH)が10µU/ml以上や、高コレステロール血症を伴う場合などでは、合成T4製剤の内服を検討します。
亜急性甲状腺炎は症状に応じて副腎皮質ホルモン(ステロイド)や抗炎症薬の投与が必要です。症状改善後は薬を徐々に減らし、中止します。甲状腺中毒症状が強いときは、βブロッカーなどを使用します。
甲状腺腫瘤は、良性腫瘍であれば、原則的に治療はせず、経過観察します。悪性腫瘍の場合は、手術が基本となります。超音波検査に加え、専門病院での細胞診検査を提案し、連携する専門医療機関へご紹介いたします。
問診
症状の内容や経過、のどの腫れ・しこりの有無、既往歴などをお伺いします。
触診・検査
のどの触診に加え、血液検査(甲状腺ホルモン値など)や超音波検査を行います。
診断・治療方針のご説明
検査結果をもとに診断を行い、内服薬による治療や経過観察など、今後の方針についてご説明します。
治療・経過観察
状態に応じて薬物療法を行い、定期的な血液検査によりホルモン値の推移を確認しながら、薬の調整を行います。
専門医療機関との連携
精密検査や手術療法が必要と判断した場合は、適切な専門医療機関をご紹介します。
甲状腺疾患の多くは、適切な治療により日常生活を送りながら経過をみていくことが可能です。以下の点にご注意ください。
なお、お子さまやご高齢の方は、症状の現れ方や治療への配慮が異なる場合があります。普段と様子が違うと感じた際は早めにご相談ください。
痛みがないしこりでも、超音波検査などによる評価をおすすめします。多くは良性とされていますが、念のため一度ご相談ください。
橋本病があっても甲状腺の機能が保たれている場合は、治療をせず経過観察となることもあります。定期的な血液検査で機能の変化を確認しながら判断します。
症状や検査値の改善状況によって個人差があるとされています。お薬による治療を続けながら経過をみていくため、医師とご相談のうえ治療を継続していただくことが大切です。
妊娠中は甲状腺ホルモンの状態が母体や赤ちゃんに影響する可能性があるとされ、慎重な経過観察が必要です。使用できる薬にも配慮が必要となるため、妊娠中であることを必ずお伝えください。
一般的な健康診断の項目には甲状腺の検査が含まれていないことが多いようです。動悸やむくみ、体重の変化など気になる症状がある場合や、のどのしこりに気づいた場合は、健康診断とは別に甲状腺の検査をご検討ください。
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